矯正歯科

矯正歯科とは

矯正歯科とは

歯並びは一人ひとり異なりますが、なかには不正咬合といって、歯がデコボコに並んでいたり、上下の顎が反対に噛み合ったりするなど、正常でない噛み合わせになってしまう場合があります。また、一見正常な歯並びに見えていても、歯と歯の間に隙間があったり、歯が重なり合ったりしているところがあると、虫歯や歯周病にかかりやすくなります。矯正歯科は、こうした歯並びの不正を改善する治療です。基本的にはマルチブラケットとよばれる、ワイヤーを使った装置を装着していただき歯を動かしていきます。

小さなお子さまの場合、顎の成長をコントロールし、永久歯がきれいに生えてくるように誘導する治療を行ないます。歯並びがきれいになると、しっかり噛めて食べ物の消化がよくなるほか、虫歯や歯周病にかかりにくくなります。また、口元に自信が生まれて表情が明るく豊かになります。

不正咬合のままだと

歯並び(噛み合わせ)は、食べ物をしっかり噛んで食べることと深い関係があります。歯並びが悪いと食べ物をうまく噛めず、大きなかたまりが体内に入ることになり、消化不良につながります。

虫歯や歯周病にもなりやすいうえ、口臭の原因にもなります。不正咬合のまま年を重ねて入れ歯を使うようになった場合には、歯の生えていた骨にズレができていて、良い入れ歯が作れなくなってしまうというケースもあり、将来の健康を考えるうえでも大きなリスクが残ってしまいます。

また、ご自身の口元に自信がもてず、話をするときにいつも口元を隠してしまうなど、コンプレクスになるおそれもあります。発音に支障が出るということも考えられます。

成人矯正

成人矯正

矯正歯科は歯並びを改善する治療分野ですが、成人の矯正治療は患者さまの口腔内の状況により治療方針が大きく変わることがあります。まずはお口の中の精密検査(虫歯、歯周病、欠損歯数、予後良好歯、不良歯など)をしっかり行ない、総合的な治療計画の中で矯正治療の治療方針を決定します。

矯正治療に年齢制限はありませんが、歯の移動は歯を支えている歯槽骨の改造現象により起こるため、歯槽骨の病気である歯周病を無視して安全な成人の矯正治療はできません。現代生活習慣病といわれる歯周病は30歳以上の成人の80%がかかっているといわれています。

したがって、歯周病にかかった患者さまにより安全な矯正治療を施すためには、矯正歯科の診断能力はもちろんのこと、歯周病に対するより正確な知識と治療計画も必要不可欠になります。これはほんの一例ですが、1本の歯が生涯にわたって長く、健康的にもつかどうかを知ることは、矯正治療を行なううえではとても重要な要素なのです。

とくに成人の歯は治療を何回も重ね、1~2年でもたなくなってしまうような歯を抱えている場合も多いのです。一般的に、矯正歯科は歯科の中では特殊分野に見られがちですが、一口腔単位を健康的に回復するという意味では、矯正歯科だけが特殊であってはならず、さまざまな治療分野と矯正歯科が連携をもつ総合的な考え方が、結果として健康的で快適な口腔内を患者さまに提供できるのだと思います。

矯正治療終了後に、歯並びはきれいになっても、虫歯だらけになったり、歯がグラグラしたりしては困るのではないでしょうか。不正咬合を知ることと、個々の歯のより正確な健康状態を知ることは、より安全に矯正治療を受けていただくためにとても大切なことです。なわ歯科医院では、矯正治療を受けるすべての患者さまにお口の中の精密検査を受けていただきます。

検査の結果、お口の中の問題点が不正咬合だけという患者さまは、一般的な矯正歯科治療の治療方針に従い診断を行ないます。検査の結果、不正咬合のほかに、虫歯、歯周病、欠損歯など、問題のある患者さまは、保存治療、歯周治療、補綴治療を十分考慮したうえで、抜歯部位などの治療方針を検討し、総合的な歯科治療の中で矯正の治療方針を決定します。

小児矯正

小児矯正

お子さまの矯正治療の開始時期の目安は、なわ歯科医院では小学校1年生くらいからとしています。その理由は、まずお子さまとのコミュニケーションが取りやすいことと、6歳臼歯と前歯部が永久歯に交換される時期なので、今後の咬合状態と成長予測がつきやすいからです。

よく3歳くらいのお子さまの反対咬合について矯正相談を受けるのですが、この時期の反対咬合は永久歯交換後に環境が変わることがあり、矯正装置の正しい使い方を指導するにはお子さまに負担が多いかとも思われます。また、この時期に矯正治療を始めなくても後で大きな問題にはならないので、お子さまが自分の意志で治療に協力してくれる時期を待つようにしています。

お子さまの矯正治療の治療目標は、まず正常な成長発育の誘導と正しい永久歯との交換、咬合誘導をしてあげることです。そのため永久歯にすべて交換される12歳くらいまでは、歯の表面につけるマルチブラケットとよばれる一般的な矯正装置は使わず、歯の裏側につける固定装置あるいは拡大装置と、取り外しのできる顎外装置を、夜寝るときに使ってもらいます。そのため、この時期の矯正治療は、基本的には外から装置が見えません。

舌側矯正

舌側矯正

舌側矯正とは、歯の裏側に装置をつけて矯正を行なう治療です。
矯正治療は装置をお口の中に装着してから、治療終了まで平均2~3年くらいかかります。
よく患者さまから言われるのが「歯並びは改善したいけど、装置が外から見えるのがちょっと…」というお悩みです。実際にある患者さまに言われました。「私はいま、美しくいたい」と。舌側矯正は歯の裏側に装置がつくため、外から矯正装置が見えません。また現在の舌側矯正の装置は、従来のものより小型化され違和感もとても少なくなりました。また、歯の裏側は唾液腺の関係から唾液がよく還流し、虫歯にもかかりにくくなります。 外側から装置をつける一般的な矯正治療と比較して、治療における差は生じません。2~3年の治療期間ですが、歯の裏側に矯正装置がつくことで、矯正装置が見えずに美しく過ごせることは価値があることなのかもしれません。人はいま、美しくいたいのですから。

矯正治療の流れ

  • 一般検査

    歯周病や虫歯の有無、欠損している歯の確認など、お口の中の一般的な問題を把握するための検査を行ないます。一般検査で問題点が不正咬合のみと判断された患者さまは、矯正の検査に移ります。

    一般治療
  • 矯正の検査

    矯正歯科において重要な情報を収集するための検査です。お顔の正面や側面などのレントゲン撮影で、歯や歯根の状態を確認しています。また、お顔やお口の中も撮影します。さらに歯型をとって、模型を作り、噛み合わせの確認をします。

    矯正の検査
  • 一般的な矯正歯科治療の治療方針に従い診断

    検査結果をもとに、患者さまの治療計画を立てていきます。実際に治療に移る前に、患者さまに治療内容や治療にかかる期間、それに価格についてご説明します。ご不明な点がありましたら、些細なことでも構いませんのでお聞かせください。

    一般的な矯正歯科治療の治療方針に従い診断
  • 治療開始

    治療計画についてご同意いただいたら、治療を開始します。矯正装置(小児矯正では床矯正の装置の場合もあります)を装着していただき、歯科医師が指示したとおりに使っていただきます。ケアの方法についてもお伝えします。

    治療開始
  • 保定、メンテナンス

    理想的な位置に歯が動いたら、リテーナーを装着して歯を保定します。歯が後戻りしないのを確認して治療は終了です。その後は定期的にメンテナンスに来ていただき、何か問題が起きていないか確認します。

    保定、メンテナンス

検査の結果、不正咬合のほかにも
問題点のある方

抜歯部位の検討、インプラント、歯周治療、歯周再生治療、歯周形成外科など、
さまざまな治療分野の中から、総合的歯科治療での矯正歯科治療計画を立案します。

  • 矯正の検査

    お顔のレントゲン撮影や歯や噛み合わせの状態確認など、矯正歯科に必要な検査を行ないます。

  • 総合的歯科診断

    不正咬合以外の改善も含めた矯正歯科の治療について、立案した計画をご提示します。患者さまに治療内容や治療にかかる期間、それに価格について説明します。不明点がありましたら、些細なことでも構いませんのでお聞かせください。

  • 治療開始

    矯正装置を装着し、治療を開始します。定期的に通院していただき、歯がどれくらい動いたかチェックします。

  • 保定、メンテナンス

    歯が理想的な位置まで動いたのを確認したら、後戻りを防ぐために保定します。その後も定期的に通院していただき、メンテナンスを継続します。

リテーナーによる後戻り防止

矯正歯科は、歯が理想の位置に動いたら完了するわけではありません。移動したばかりの歯は、歯根の周りの骨がまだ不安定なため、自然に動きやすい状態になっています。そのまま日常生活を送り口や顎を動かしていると、歯が元の位置に戻ろうとします。これを後戻りといいます。後戻りを防ぐため、矯正歯科の後にリテーナーとよばれる保定装置を装着していただきます。骨が安定するまでの1〜3年ほどはリテーナーを指定された時間つけていただき、定期的に通院していただいて後戻りしていないか確認します。歯が安定してきたのが確認できたら、矯正歯科は完了となります。

矯正治療にともなう一般的なリスク・副作用

  • 機能性や審美性を重視するため自費(保険適用外)での診療となり、保険診療よりも高額になります。
  • 最初は矯正装置による不快感、痛みなどがあります。数日から1~2週間で慣れることが多いです。
  • 治療期間は症例により異なりますが、成人矯正や永久歯がすべて生え揃っている場合は、一般的に1年半~3年を要します。小児矯正においては、混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期)に行なう第1期治療で1~2年、永久歯がすべて生え揃った後に行なう第2期治療で1~2年半を要することがあります。
  • 歯の動き方には個人差があるため、治療期間が予想より長期化することがあります。
  • 装置や顎間ゴムの扱い方、定期的な通院など、矯正治療では患者さまのご協力がたいへん重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
  • 治療中は、装置がついているため歯が磨きにくくなります。虫歯や歯周病のリスクが高まるので、丁寧な歯磨きや定期メンテナンスの受診が大切です。また、歯が動くことで見えなかった虫歯が見えるようになることもあります。
  • 歯を動かすことにより歯根が吸収され、短くなることがあります。また、歯肉が痩せて下がることがあります。
  • ごくまれに、歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
  • ごくまれに、歯を動かすことで神経に障害を与え、神経が壊死することがあります。
  • 治療中に金属などのアレルギー症状が出ることがあります。
  • 治療中に、「顎関節で音が鳴る、顎が痛い、口をあけにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
  • 問題が生じた場合、当初の治療計画を変更することがあります。
  • 歯の形状の修正や、噛み合わせの微調整を行なうことがあります。
  • 矯正装置を誤飲する可能性があります。
  • 装置を外すときに、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、補綴物(被せ物など)の一部が破損することがあります。
  • 装置を外した後、保定装置を指示どおりに使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
  • 装置を外した後、現在の噛み合わせに合わせて補綴物(被せ物など)の作製や虫歯治療などをやり直す可能性があります。
  • 顎の成長発育により、噛み合わせや歯並びが変化する可能性があります。
  • 治療後に親知らずが生えて、歯列に凹凸が生じる可能性があります。
  • 加齢や歯周病などにより歯を支える骨が痩せると、歯並びや噛み合わせが変化することがあります。その場合、再治療が必要になることがあります。
  • 矯正治療は、一度始めると元の状態に戻すことが難しくなります。

舌側矯正装置による治療にともなう一般的なリスク・副作用

  • 機能性や審美性を重視するため自費(保険適用外)での診療となり、保険診療よりも高額になります。
  • 装置に慣れるまで発音しづらいなどの症状が出ることがあります。
  • 矯正装置を装着している期間は、適切に歯磨きができていないと、虫歯や歯周病にかかりやすくなります。歯磨き指導をしますので、毎日きちんと歯を磨き、口腔内を清潔に保つようご協力をお願いします。
  • 歯磨き、エラスティック(顎間ゴム)の使用、装置の取り扱い、通院などを適切に行なっていただけない場合、治療の期間や結果が予定どおりにならないことがあります。
  • 成長期の患者さまの治療では、顎骨の成長を予測し、現段階において適切な治療を行ないますが、まれに予期できない顎の成長や変化によって治療法や治療期間が大きく変わることがあります。また、顎の変形が著しい場合には、矯正治療に外科的処置を併用することがあります。
  • 歯を移動させることにより、まれに歯根の先端がすり減って短くなる「歯根吸収」を起こすことがあります。しかし、適切な矯正力で歯を移動させることでセメント質(歯根表面を覆っている組織)が修復されるため、歯根吸収のリスクを軽減できます。
  • 歯の周囲の組織は、治療前の状態に戻ろうと「後戻り」する性質があるため、治療後も数ヵ月から1年に1回ほどの頻度で通院いただいて歯の状態を管理し、後戻りを防ぐ必要があります。